「おい!、昼からは全部自習だぞ」とマツが言った。私の戦争体験

「おい!、昼からは全部自習だぞ」とマツが言った。私の戦争体験

一寸寒くなり出した、小学4年の秋の午後のことだったかな。マツが教室の先生が出入りする入り口を開けて叫んだ。いつもは、あまり生徒は黒板のある側の入り口を開けることはないのに、気にせずに開けたのは、もう先生がいないことを確かめているのだ。   

 マツは「残っとるのは小使さんだけだぞ」「みんなバタコウ(三輪オートバイ)で、町へ映画を見に行ったんだ」といった。

一年前までは、小学3年生の生徒にビンタを張ったり、気に入らないと足をかけて倒したりしていた先生たちが、午後の授業を放り出して映画を見に行ってしまったことが分からなかった。我々の担任だった女の先生は、体操の時間の成績の良い生徒の「エコヒイキ」がきつかった。

私の田舎の30人の小学生は、幼稚園から中学3年まで同じクラスだった。その中学卒60年後の同窓会の時でさえ、「あの先生は嫌いだったなあ」という声が出るほど、昔の生徒の態度は厳しかった。

国民のみんなが、大勢に合わせる雰囲気になると怖い世の中になること。みんながそれぞれの独自な意見を持たず、なんとなく依存心が強い現在は怖い時代だと思う。

最近気になっているのだが、あれは映画を見に行ったのではなく教員組合を作る集会のためだったのではないかという子がしている。時期的にもそんな気がする。