表層雪崩の下、高校生遭難事件

子供の頃、春休みの期間が、一年で最も気分の良い時期だった。
まず、田畑は雪に埋まっているので、農作業の手伝いをせよと言われない。全部自由時間だ。3月中旬以降の太陽が降り注いだ翌日は、表面の雪解けによる水分が多いところが、夜間の気温低下で凍って、アイスバーンになる。すると子供・大人はもとより、馬がそりに材木を積んで通っても大丈夫だ。
小学3年生ぐらいから上の子は、朝6〜7時頃になると、それぞれで自分用の小さなソリを持って山へ行く。スキーゲレンデのような斜面は、勾配が急なので避けて、普段はゲレンデにならないような緩い斜面に行く。7~800メートルぐらい続く斜面を滑り降りるのは爽快だった。スピードが出てひっくり返るのは普通なので、あちこち擦りむいたりした。
神鍋山、御机山一帯を上ったり、滑り下りたりして遊んでいて、11時近くなると春の日差しでアイスバーンが緩んでくる。そうなれば今日は終わりだ。
表層雪崩というのは、このアイスバーンの上に積もった雪が流れ下ることだ。樹林帯の中は、日差しも強くないし、夜間の気温も低くなりにくい。だから表層雪崩も起きにくい。
今回の事件の報道を聞いていると、予報だとか責任だとかいう議論が多すぎる。地元の小中学生ぐらいは、上記のような気象条件を知っているはずだ。まして高校山岳部のメンバーには知っているものが多かったはずだ。先生よりは事情に詳しい高校生もたくさんいたのではないか。
訓練のためのラッセルならば、樹林帯の中の方が凸凹があって訓練にはよいと思う。もちろん雪崩も起きにくい。わかっている人間(教師でも生徒でも)がリードしなけりゃ安心はできない。
今の学校教育が、私の子供のころのようになっているのではないか。軍国統制時代のような、実態を無視する建前と責任だけで判断し、知恵を無視する軍国教育時代に、戻っているように思えてならない。