20世紀・余命
この糸島では、20世紀ナシが小ぶりのもので398円、普通(決して大きくはない)で498円もする。このあたりの人は幸水などという茶色のナシを好んでいるし、その方が大きくて少し安い。だが私は子供の頃の記憶から逃れられず、酸味のある20世紀が好きだ。「酸味のないのは果物ではない」と言って、我が家のアマナツを誉めてくれた人もいる。
という訳で毎年1個だけ買うことを許可してきた。しかし去年の秋から体調が悪化して、息切れがひどくなり出した。決意して福岡山王病院に行ったところ、“肺気腫”などという病名を貰ってしまった。これ以外にも肺にかかわる病名も付いた。肺気腫をネットで検索してみると「余命は……」という説明が出てくる。「そういうことか。ならば少し優しくしてやろうか」と思って、鳥取に20世紀ナシを注文した。
私の生まれは但馬の国だが、隣の因幡の国が20世紀ナシの産地で、但馬まで産地が膨らんでいる。戦前も食べたが、但馬西部地域仕事でよく行ったので、買ったり送っていただいたりした。