6 但馬牛の飼育は、農家収入の柱の一つ

 たしか、3才牛になった頃からだったと思うが、発情すると種付けをする。オナメ(雌の仔牛)が生まれるとかなりの値段で売れるので、副業としてもなかなか「助かる」のである。コットイ(雄)と十倍ぐらい違ったように思う。オナメは十年余にわたって仔牛を生むので、高値で売れていく。種牛にならない一般のコットイは、肥育牛として引き取られる。
 オナメが生まれると、秋の牛の競り市でかなりの収入が約束されるので、大喜びだった。同じ期間育てても、売値が全く違った。私の牛飼いに対する貢献も認められていたので、競り市の市場までついていき、いくらの値が付くかを固唾をのんで見ていた。
 よい値が付くと、近所中を呼んで「牛のご馳走」という習慣が出来た。それはオナメが売れたときだけだった。