オチコボレ経営者の、税金・役人嫌いの弁 1

 役人嫌いの根源について書きたい。
 働いている期間のほとんどが、小企業の経営者だった。その時のポリシーは、3点ある。①世間並みの給料は払いたい。基準は「県庁の職員ぐらいは」であった。②経営を安定させて、いざというときにも、給料を払えるようにしておきたい。③税金は出来るだけ少なく、遅く払う、ということである。
 ①の場合に対応するのだが、社員(組合員の時もある)と話していると、「手取り」という言葉が出てくるのに腹を立てていた。そういう言葉が出てくると私が激昂して「手取りとは何だ、手取りとは」声を荒げるので、みんながびっくりしていた。「会社は、払った上で源泉徴収させられて、君らの税金払いの手間を代行させられているんだぞ。そればかりではないぞ、健康保険や厚生年金保険料なども会社が半分出しているんだぞ」といっていた。 
 公務員と民間会社の人件費比較についても文句がある。民間の従業員は、税込みの給与プラス保険料プラスこれらの事務を行う人間の人件費も負担している。一方、公務員はそれら全部が税金でまかなわれている。
 民間会社は、人件費に加えて、材料費やその他の経費を稼ぐのも自己責任だが、公務員は“税収奪という権力機構”で守られている。つまり、警察や税務署という権力構造が収入保証の営業活動をやってくれるのである。
このことを酷く感じさせられるのが、2〜3年に一度はやってくる税務調査であった。新聞などで「脱税だ」といって、いかにも悪者のように言うことがあるが、私はとりあえずは、税務署が強引ではないかと思う。
 税金はある期間の収益(売り上げ−経費)に対して課税されるのだが、経費が本当に必要なものか、どの売り上げに対応しているのかが争点になる。私は税金を払うぐらいなら給与を上げたいと思っているので、払う額を減らしたい、払う時期を遅くしたい、という立場で税務署員との攻防が始まる。そこで彼らは、ネチネチとチンタラチンタラ聞いてくる。これが一番ばからしい時間だ。
 チンタラチンタラやられると、一応付き合わねばならんので時間がもったいなく、仕事に差し障りが出る。まして帳簿を持って行かれると、お手上げになる。その時私は、腹の中で「おぬしは俺らの税金で給料をもらい、時間が延びたら残業代まで、俺の税金からせしめるのか」と唸っている。
 もう一つ、「本を買うのは基本的に、会社負担とする。特に変な本でなければ、小説なども買え」といっていた。従業員の側に経って、税務署に敵を取る気分だった。