「狐のたくらみ」という本。次兄(9才年上)から小学五年の時、買ってもらったもの

<驚き、違和感を感じた本の内容>

 嘘、欺瞞、だまし討ちなどを使ってライバルを倒した狐が、最後には王様のライオンと民衆の支持を得て尊敬されるという話であった。

私の読書体験の第一位に上がる本だ。大阪に勤めていた9才上の次兄が送ってくれたモノである。昭和22年の発行だから、私は小学5年生だったことになる。一読、訳が分からなかったような記憶がある。それが、今思い出させる理由にもなっている。

 動物国のライオン大王のもとに、正直者のタヌキ男爵やキツネ子爵などがいて、何時もキツネが、モノを取ったり、小さいウサギなどを食ったり、あらゆる悪の元で、問題を起こしていた。それに対して正直者のタヌキ男爵が告発をし、みんなもそれに賛成して王様の元で裁判が行われる。

 もちろん大衆はキツネを糾弾するが、口のうまいキツネの弁舌によって「両者が決闘でけりを付ける」というライオン王の判決になる。

 決闘の当日、正直者のタヌキは正直に準備するが、キツネは全身の毛を剃り、油を塗って掴み所の無いようにする。さらに、シッポにトウガラシの粉を付けて、それで眼を狙うことにするのだ。

 毛を剃ったキツネが広場に出たとき、全観衆は嘲笑の笑い声を発して馬鹿にした。ツルツルに沿っているキツネの格好がみっともないというわけだ。ところが決闘は一方的にキツネの勝利になる。タヌキは目をやられて、見えないままに暴れるが敵ではない。

 動けなくなったところで、ライオン王はキツネの勝利と正義を認定する。全観衆は、数匹のタヌキの親戚を除いて、全員でキツネを褒め称え、熱狂的に賞賛した。

 私は、今でも「正しい」とか「正義」は嫌いだ。それは多数決のことだからだ。「正義」という言葉には誠実さを感じない。しかし勝たねば誰も認めてくれないという、大人社会の論理で書かれた動物国の話に驚いた。

 この写真の本は、兄の想い出を残すために、ネットで探して買ったもの。もらった本はどこに行ったか分からない。55年前ぐらいに、田舎の家を建て替えたときに、いろいろなものがなくなったのだろう。こんな訳の分からん本を送ってくれた兄に感謝している。