「ダンケルク」という映画に涙した。

気になったので、9月11日に見に行った。途中から涙が止まらなくなった。ずっと負け戦を描いているのだ。正確に言えば、撤退戦だ。撤退ほどつらい戦いはない。それを、国を挙げて全精力を込めてやったという物語だ。
映画の始まりは、逃げる英国兵が倒れていくさまから。ダンケルクの海岸にたどり着くと、そこには英国へ撤退するため、船を待つ兵隊の長蛇の列が何本もある。そして、自分が早く乗船できるように争い合っている。
一方、ドーバー海峡では、遊覧船が走っている。その途中で転覆した船の上で助けを待っている兵士を見つける。助けられて兵士は「ダンケルクへ行っても無駄だから、ひきかえせ」と遊覧船のオヤジにつかみかかる。
それを見た息子(弟)が親父を助けようとすると、その兵士は息子を突き飛ばして倒す。打ち所が悪かったのか、結局死亡させてしまう。それでも親父は毅然としてダンケルクへ向かう。彼の言葉で感動するのは「この船の船長は私だ」と言って態度を決めていくことだ。
このように多くの遊覧船やヨット、漁船などが、海軍の要請に応じてダンケルクへ向かっていった。
一方、ダンケルクの海岸では、なかなかやってこない海軍の艦船を待っており、撤退式担当の海軍大佐が指揮を執っていた。映画の中の素晴らしいシーンだと私は思ったのだが、陸軍の大佐(?)が近寄って、何か話しかける。しばらくして海軍大佐が、何も見えそうにない海の方を双眼鏡で見ていると、陸軍が「何が見えるかね」と問いかける。「祖国が見える」と返事をする。
その双眼鏡の先が映画の画面になる。そのシーンには無数の漁船や遊覧船、エンジンのついたヨットなどが映し出されている。このことは実話だ。その小舟の集団の中の一つが、「この船の船長は私だ」といった遊覧船だ。
いぎりすでは“ダンケルク精神”ということが言われているらしい。この撤退戦はチャーチルの演説とともに、国を挙げて戦われた(逃げる努力をした)ようだ。そしてドーバー海峡の英国海岸では、帰ってくる兵士を迎える“紅茶とパンとソーセージ”を、住民総出で準備がなされていた。