横浜の傾きマンション

 テレビ、新聞、週刊誌にとって、当分ネタのサポートになりそうだ。
 どれも口をそろえて「ケシカラン、けしからん」の大合唱だが、「買う以前にどうすればよかったか」「今後どうすればいいか」ということにはあまり触れない。
 「大手業者だから安心していたのに」という声があり、マンションの販売業者=発注者―施工会社―1次下請け―2次下請け(建材会社)といった図が書かれ、建材会社がくい打ちの偽装をしたといって糾弾されている。
 まずここで、「建材会社がくい打ちの施工をしているはずがない」と思った。またこのような末端の業者に、工期の無理などのしわ寄せが行きやすい。
 マスコミは、「我こそは正義だ」と言って他人をとっちめ、視聴率を上げることが目的なので、マンションを買った人の問題は追及しない。私は、このような物件には、どんなリスクがあるかを調べて、注意を喚起することがマスコミの役割だと思うが、マンション販売の広告を出すところのマイナスになりかねない言説はタブーになっている。
 私は小さい工務店で工事をやったことがあるし、団地の理事会に入って修繕積立金の値上げや修繕工事の発注側をやったことがあるし、900件近い地権者のかかわる再開発事業の権利調整案・事業計画案づくりにも携わったことがある。
 そもそも、共同住宅というものにどの程度のメリットとリスクがあるかの注意喚起を、マスコミにお願いしたい。
 眺めが良かったり、日当たりが良かったり、いろいろな利点がある。しかし、1つの瑕疵、一か所の手抜き工事が全戸の瑕疵につながる。かなり恐ろしい建物だ。
 私は、再開発事業で一番気を付けたことは、①事業赤字を出して関係外の人たちの後の負担にならないようにすること、②建物(躯体)の構造上の不安をなくすこと、③一般に忘れられやすい水回りなどの水道・下水・電気・ガスなどの業者を厳選することだった。デザインはその次だ。
 修繕積立金の値上げをやるときに、「もし、売ることになった時、修繕積立金がしっかり残っているビルは、価値が高いですよ」と言って説得した。上下水などは15年たったら修繕しなければならない。そういう工事がしやすい設計(工事区分が分かれている)になっているかどうかも、後の評価に大きく響く。こんなことは現在では常識になっていて、すべての人が注意していることで、問題ではないかもしれないが。