母親から教えられたこと

「どんなモノの中にも、神さんがおられる」「どこにでも仏さんがおられるんだよ」ということが母親の口癖だった。おそらく、親から受け継いだ言葉だったのだろう。仏さんっと神さんの区別はなかった。
10歳以前の頃の話だから、鎮守の森の方ではカミサマで、寺の本堂の奥の方にはホトケサマがたくさんおられるような気分だった。そのどちらも、チョットした広場があり、カンケリや三角ベースの場だった。
しかし、学校では一神教の世界だった。天皇陛下が一番偉く、他の神様や仏様は日常の生活の中に入っていた。
私の郷里は近畿北部なので、大雪地帯だ。多い時は2〜3メートル積もった。それが紀元節の頃で、2月11日だ。この日は朝7時ごろに家を出て800mの道を(遠い集落の子は2.2キロ)、西北からくる吹き飛ばされそうな吹雪に向かって登校した。
小学3年生になると、一応上級生(ある意味で大人扱い)なので、「ストーブ当番」というものがあった。当番の日は、6時半ごろに家を出ていたように思う、焚き付け用のマッチと杉葉を持って行った。
昔は、ストーブの火は、子供が責任を持って管理していたわけだ。ご飯を炊いたり、ふろを沸かすことなどは子供の仕事だった訳だから、当然といえば当然だ。子供でも火は大切にした。神様や仏様がおられるような気がして、気をつけねばならなかった。