コブシとユリのこと

 コブシとユリについての、私自身の認識は間違っていたようだ。
3月13日に書いた木蓮のことは訂正せねばならん。山村育ちの私にとってコブシは、まだ肌寒いころに山林の中で“ポツン”と咲いている「けなげな」花だった。樹も少なく花もそれほど付けていなかった。我が家のあるものはハクモクレンだと思っていた。こんなに騒々しく花をつけるものと、一緒にしたくない気分だ。
 ユリについての思い出は、夏休みの早朝(6時ごろ)牛を連れてスキー場の方へ行った時などだ。その頃は原野の斜面であり、膝から腰くらいのブッシュだった。そこをかき分けて歩いていると、フッとユリの匂いが来た。足元にユリがあるわけではない。数メートルの範囲にはある。その真っ白なユリを見つけると、なんかホッといい気分になれた。自分で引き抜く気にはなれなかったし 誰にも取られずにいてくれることを望んだ。
4〜5年生の頃であり、騒々しくカラフルで、ギトギトした雰囲気のユリとは同じ花とは思っていなかった。いまや世の中も騒々しいが、花も騒々しくなった。