日常、いかなる出来事に出会いても、めっけものと思え

 この頃池部良の本を読んでいる。そうしていると、池部のことがよく目に入る。この見出し語は、父親の鈞氏が送ってきた手紙の中の文句であり、産経新聞のコラムに載っている(3月19日)。
 「めっけもの」というあたり、いかにも江戸っ子風だ。同じコラムの中に「怪我をしたら、よくぞ死ななかったと思え」とか、幹部候補生(少尉となり30−50人の部下を持つ)になったとき「部下の生死にも責任を持つべし」「とにかくお前は死ぬな」などと書き送っている。池部良著「続々そよ風ときにはつむじ風」
 「いかなる出来事に出会いてもめっけもの」とは乱暴だが、この父を池部良は尊敬している。小学生のとき、「一番尊敬する人物を書け」といわれて、「天皇陛下ともナポレオンとも書かず、ためらいもなく『父』と書いたら、それは尊敬する人じゃないと、ひどく先生に叱られた」(『風が吹いたら』)ということである。