絶対雑音欠乏症音感

ちょっと原稿を書いていて、夜中に少しコーヒーを飲もうかと思って、お湯を沸かしている間にテレビを付けた。機関車が颯爽と走っている写真である。よく見ると、近畿地方の田舎を通っている写真だ。私は山陰のレールのない田舎の生まれなので、懐かしい気分で見入ろうとした。
ところが、なにやらバイオリンのような、機関車とも、風景とも関係のない音が聞こえてきて、私の気分を邪魔して落ち着かせなくする。この雑音はテレビの中に仕組まれていて、消そうとすると機関車の音まで消えてしまうのである。
テレビ屋さんは、私が機関車のシューという音や、迫力のある汽笛などを聞くと、精神に異常を起こすかも知れないと考えて、バイオリンのような雑音で中和させてくれているのかも知れない。
しかし馬鹿は機関車の音が好きなのだ。
オーシャンズ」という映画もおかしかった。馬鹿は、深海の風景から聞こえる楽器の音は聞きたくないのだ。鯨の声などを聞きたいのだ。大きな波と海鳥の音を聞きたいのだ。こういう馬鹿は存在してはいけないのか。