心に残った映画

 三国連太郎の老父がファクシミリを持って、雪に埋もれかけた山村の家に、入っていくシーンが心に残っている。「息子」という映画である。
 結婚相手がいないのではないかと、心配していたオチコボレの次男が、聾唖の娘と付きあうようになり、ファクシミリで心を通わせていた。それを知って老父は、いっぺんにうれしくなり、一寸飲んで「おとみさん」を歌い出す。そして翌日、3人で電気屋へ行きファクシミリを買って、雪深い里での一人暮らしに戻っていくのだ。
 私は「個族化社会のネットワーク形成」という、NIRAの研究報告を書いたとき、家族形態の社会的変化を書くために、「東京物語」、「息子」、佐藤愛子の「風の行方」を狂言回しとして引用した。それは。家族が核家族に移ってしまう過程、核家族化した中で老父が個族となって雪深いの農村に取り残される過程、家族がバラバラになり、一緒に住んでいても個族の同居である時代、を提示するための取り上げた。
 今やIT化が進んで、もっともっと転換(進歩)している。上記の研究報告は2001年頃にまとめたのでブログやフェイスブックなどを、予測する力はなかった。「こうしたら、こんなプロセスになり“こんな結果の解決が出来る”ということが書かれていないじゃないか」というおしかりを受けて力が抜けた。
 今は、オチコボレの個族との会話を続けたいと思っている。